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『ギリギリの女たち』(2011年)を見たのは、昨年秋の第24回東京国際映画祭の特別上映「震災を越えて」でのことだった。小林政弘監督が宮城県気仙沼市の被災地に所有する家を舞台に、震災を機に再会を果たした三姉妹による愛憎劇ということで、上映の枠組みといい、当初は3.11が「フィクション」のスクリーンで…
編集部
 今年のカンヌ映画祭における、テレンス・マリックの最高賞パルム・ドール受賞という何の驚きも無い結末は、映画祭のコンペティションは如何に在るべきかを改めて問いかけた。確かに、圧倒的な映像美によって生命誕生から一組の父子の物語までを綴る壮大な交響詩『ツリー・オブ・ライフ』は、パルム・ドールに相応しい作…
瀬尾尚史
 平倉圭の『ゴダール的方法』は、ひたすらゴダールへ内在するその徹底性において前例を見ない映画論である。著者は、「ゴダールの映画それじたいを分析の方法とする」(12頁)と述べる。知られるように、ゴダールは、編集台における映像と音響のモンタージュによって新たに「思考」を生成させる「方法」を練り上げてき…
三浦哲哉
 最良の映画はラディカルなシンプルさを獲得する。本年度カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクンの新作『ブンミおじさんの森』(『Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives』アピチャッポン作品としては、ようやく日本初の一般公開…
石橋今日美
 今年の閉幕セレモニーの冒頭、司会のクリスティン・スコット・トーマスは、「カンヌ映画祭は映画を護る要塞である」というスティーヴン・スピルバーグの言葉を引用した。映像をめぐる技術革新や、情報ネットワーク環境の変化が映画の在り方を大きく変容させつつあることは言うまでも無く、カンヌ映画祭もまた、そうした…
瀬尾尚史
審査員。左から ジャン=フランソワ・ロジェ(シネマテーク・フランセーズ・プログラム・ディレクター)、ジョヴァンナ・フルヴィ(トロント国際映画祭アジア映画プログラマー)、崔 洋一(映画監督/第10回東京フィルメックス審査委員長)、チェン・シャンチー(俳優)、ロウ・イエ(映画監督)  なかなか平日フィ…
石橋今日美
【セッション1】装置間の争い ── 映像メディアの混淆とその体験  基調講演に続く「セッション1」では、堀潤之の司会のもと、コメンテーターの武田潔とトロン・ルンデモによって、ベルールが提起した問題への応答と展開がなされた。  武田潔は、かつてクリスチャン・メッツのもとで学び、フランスを中心とした映…
三浦哲哉
ヨコハマ国際映像祭2009 CREAMフォーラム 基調講演 「35年後──「見出せないテクスト」再考」 「今、わたしたちは映像の海を前にして毎日生活をしています」と、この映像祭のパンフレットには書かれている。従来型の「映画祭」ではなく「映像祭」を開催することの意義がここに集約されている。事実、…
三浦哲哉
 今年のロッテルダム国際映画祭タイガー・アワード(新人監督に与えられるグランプリ)に輝いた3作品のうちの1本『息もできない』(英題『Breathless』。来春シネマライズにてロードショー公開予定)を見る。監督ヤン・イクチュンは、短編『Always Behind You』(2005)で監督デビュー…
石橋今日美
 今年で10回目を迎えた東京フィルメックスのオープニングを飾ったのは、今年のカンヌ国際映画祭コンペティションをはじめ、各国のフェスティバルで上映されたツァイ・ミンリャン監督の10作目、『Visage』(英題『Face』)。以前本サイトでも触れたが、オルセー美術館×ホウ・シャオシェン(『ホウ・シャオ…
石橋今日美
 来年度の国際映画祭サーキットで再び話題をよびそうな石井裕也監督の新作『君と歩こう』(『川の底からこんにちは』[2009]とともに2010年劇場公開予定)。本サイトでもすでに取り上げた独自の石井ワールドが、いかなる変貌をとげているのか、海外からのゲストも興味津々。『君と歩こう』は、片田舎の女性英語…
石橋今日美
 今年1月〜2月初頭に開催されたロッテルダム国際映画祭では、トルコ映画特集が組まれていた。偶然だが、世界各国の監督の長編第1、2作を集めたコンペティション部門でタイガーアワードを受賞した3本のうちの1本が、トルコ出身のマフムト・ファズル・ジョシュクンの『二つのロザリオ』(2009)だった。“Wro…
石橋今日美
 “Action ! For Earth”とエコ・環境問題に対するメッセージをより強く打ち出した第22回東京国際映画祭が10月17日より開幕した。今年は『アモーレス・ペレス』(2000)、『バベル』(2006)で知られるメキシコ出身の映画監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥを審査委員長に、1…
石橋今日美
 ポーランド第四の都市、ヴロツワフ。第二次世界大戦後まで続いたドイツによる占領をはじめ、さまざまな国の支配を受けてきた古都には、ポーランド市民の独立の象徴、コシュチェンコの戦いを描いたパノラマ(映画以前に誕生したご存じのパノラマ)が、現在でも名所のひとつとなっている。オドラ川がなす中洲とレンガ造り…
石橋今日美
マノエル・デ・オリヴェイラは、その100歳を祝う昨年のカンヌ映画祭のイヴェントで、「作家の映画」を飛行機に喩えたフェリーニの言葉を引用しつつ、「映画祭とは空港であり、カンヌは最も美しい空港である」と述べた。 ケン・ローチ、マルコ・ベロッキオ、ミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアー、ペドロ・ア…
瀬尾尚史
 カンヌ国際映画祭が開幕した。今年は世界的な不景気のために、映画祭開催直前までホテルには空室があり、アメリカのメジャーの巨大な広告パネルも見かけないという。イギリス系出版社ファイドンに買収されたカイエ・デュ・シネマの批評家たちは、噂では自費で宿泊費をまかなわなければならないとか。  不況という言葉…
石橋今日美
 04年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞と女優賞をW受賞した『ヴェラ・ドレイク』(2004)の監督マイク・リーの新作、WORLD CINEMA部門出品の『Happy-Go-Lucky』(2007)。一瞬「リー違い」(スパイク・リー)?!と思ってしまうほど、一変した作品世界に驚く。まさにタイトルを体現…
石橋今日美
 海外アニメーション・夏の陣では、パンダにカンフー、北京五輪、とあまりにも安易すぎる組み合わせではないか、と一瞬思わずにはいられないドリームワークスの新作『カンフー・パンダ』(2008)が、いい意味で予想を裏切る作品だった。主人公は、中国の山深くにある「平和の谷」でラーメン屋を営む父を手伝うパンダ…
石橋今日美
 映画は時間の芸術である、などと書くと、埃をかぶった映画の教科書を開いてしまったような気もあるが、WORLD CINEMA部門出品『シルビアのいる街で』(バルセロナ出身の監督ホセ・ルイス・ゲリン、2007)はまさに映画独自のアート性を軽やかかつ親密に証明してくれる。物語はひとりの青年(近寄りがたく…
石橋今日美
 17年ぶりに日本公開される、イエジー・スコリモフスキの新作、コンペティション部門『アンナと過ごした4日間』(4 Nights with Anna, 2008)。ティーチインでは、「可もなく不可もないような映画しか作ることができませんでした」という状態から映画に関しては活動を休止し、本格的に絵画に…
石橋今日美
 『一緒にいて』(Be With Me, 2005)をめぐって、仏映画評論ジャーナリズムでは、ちょっとした論争が起こったが、日本では一度も一般公開されていない、シンガポールを代表する監督エリック・クーの最新長編、「アジアの風」部門選出『私のマジック』(My Magic, 2008)。『一緒にいて』…
石橋今日美
久闊と追悼 Going into Albert's by the lake brings back a lot of memories... (湖畔のレストラン「アルバート」に行くのは久しぶりである)*1  それはまるで友との語らいのように始まる。シアトルに住んでいたとき、ぼくはよくそこに食べに行っ…
大久保清朗
 2007年4月、第63回国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF=Fédération Internationale des Archives du Film)の東京大会が開催された。1938年に仏独米英の4カ国で設立されたFIAFは、以来、文化遺産および歴史資料としての映画の蒐集・保存・復元・上…
編集部
1.はじめに  2007年のイタリア映画祭(会場:有楽町朝日ホール)を特色づけたものとして、古典作品の上映という、同映画祭にはなかった新たな試みを挙げることができる。日本国内での鑑賞機会が限られたイタリア映画の新作を、そのプログラムの主な対象とするイタリア映画祭は変わらず興味深いが、さらにそこに、…
柴田幹太
 エドワード・ヤンこと楊徳昌が亡くなった。6月29日のことだ。第一報は香港からの外電が伝えた。ロサンゼルスのビバリーヒルズの自宅で結腸癌により死去、59歳だった。この知らせに心を痛めた台湾の映画ファンが一体どのくらいいるのだろうか。  エドワード・ヤン死去のニュースが台湾でどのように伝えられたか─…
津村あおい
『映画愛 アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ』 リチャード・ラウド著、村川 英訳、リブロポート、1985年  映画を蒐集・保存することには、ときに、違法すれすれのいかがわしさが付き纏う。非合法な取引やコピー(いまならダウンロード)に手を出す蒐集家はいつの時代にもいるものだ。フィルム・ア…
編集部
 「世界映画史でもっとも貴重な映画作家の一人でありながら、フランス本国でさえ、今日にいたるも、ジャック・ベッケルを無条件に擁護しつくした者は誰もいない」[*1]──そう始まる蓮實重彦氏の檄文はいささかの誇張も含んではいない。映画史は、このベッケルをまえにして「無意識の自己規制」に陥り、たえず言いよ…
角井 誠
en français  成瀬巳喜男生誕100周年記念として東京国立近代美術館フィルムセンターで開催された全61本のレトロスペクティヴ(2005年9月〜10月)から1年、今回パリ日本文化会館(MCJP: Maison de la Culture du Japon à Paris)によって彼の31本…
アントワーヌ・デ・メナ
日本語版   Un an après la rétrospective de 61 films organisée par le National Film Center de Tôkyô à l'occasion du centenaire de la naissance de Mikio Na…
Antoine de Mena
&t en français  ポンピドゥー・センターにおけるジャン=リュック・ゴダール『ユートピアへの旅(1946-2006)』は5月10日から8月14日まで開催され、完全にその幕を下ろした。8月16日と17日の2日間で展示は完全に解体され、パリ郊外に程近いエマウス(Emmaüs)[*1]のなか…
セリーヌ・ガイユール
日本語版   L'exposition de Jean-Luc Godard, Voyage(s) en utopie (1946-2006), au Centre Pompidou, ouverte au public du 10 mai au 14 août 2006, a définitiv…
Céline Gailleurd
Introduction  11月17日から26日の日程で「第7回東京フィルメックス」が開催された。アジア映画の先端から、日本映画のクラシックまで幅広いパースペクティヴを持って映画を発信する同映画祭は、例年にもまして刺激的なプログラムを展開した。本年のテーマは"映画の未来へ"。東京フィルメックスが…
編集部
 2001年以来、実験的で多彩な上映プログラムによって観客を魅了してきた「ル・ステュディオ エルメス」がリニューアルオープンをむかえた。この上映施設があるのは、レンゾ・ピアノによるガラスブロックの建築としても名高い、銀座メゾンエルメスの10階。ガラスを通して差しこんでくるやわらかい光が、館内にここ…
衣笠真二郎
【10/24 火曜日】  今日は六本木ヒルズで開催される「全国映画祭コンベンション──”映画祭の現在”」へ出席する。第1部のシンポジウムでは、「ゆうばり映画祭を考える市民の会」代表の澤田直矢氏、「山形国際ドキュメンタリー映画祭実行委員会」事務局長の宮沢啓氏、「あおもり映画祭」実行委員長の川島大史氏、…
三浦哲哉
【10/21 土曜日】  第19回東京国際映画祭が開幕した。16時から、六本木に敷かれたレッドカーペット上に内外の映画人たちが続々と登場し活況を呈したが、オープニング作品を監督した御大クリント・イーストウッドの姿はそこにはなかった。『父親たちの星条旗』と、続く『硫黄島からの手紙』のプロモーションのた…
三浦哲哉
海雲臺(ヘウンデ)  第11回釜山国際映画祭が、10月12日から20日までの期間で開催された。海岸リゾート地の海雲臺(ヘウンデ)をメイン会場にして上映された作品は、”New Currents”と称されるコンペティション、最新の韓国映画をパノラマする”Korean Cinema Today”、欧米映…
衣笠真二郎
 10月6日〜8日、パリのポンピドゥー・センターで「Pocket Films Festival」が開催された。Forum des images主催のこのイベントは、仏携帯電話会社SFRをスポンサーに、高画質・長時間の動画の録画・再生が可能な「3G(第三世代)」の携帯電話を参加者に無料で貸し出し、作品…
石橋今日美
日本語版 『Seijyu Gakuen』(1974) Des films de Norifumi Suzuki, je confesse n'en connaître que quatre, qui ont été projetés au mois de septembre à Paris…
Olivier Bohler
en français 『聖獣学園』(1974) 告白しよう、私は鈴木則文のフィルムをたったの4本しか見ていない。それらは今年9月パリで催された第14回エトランジュ・フェスティヴァル(L'Etrange Festival)にて上映されたものだ。『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』(1973)、『聖獣学園』(…
オリヴィエ・ボレール
 10月21日付けの「ル・モンド」紙によれば、フランス文化庁は、オルセー美術館のホウ・シャオシェン新作への共同出資にNGを出した。ジュリエット・ビノシュ出演、アルベール・ラモリス監督『赤い風船』(1956)に着想を得た本作は当初、オルセー開館20周年記念プロジェクトとして、HHHとオリヴィエ・アサ…
石橋今日美
 8月6日土曜から日曜にかけて、スイスの偉大な映画作家、ダニエル・シュミット氏が癌のため亡くなった。享年64歳。シュミット氏は1941年スイスのグリゾン地方生まれ。少年時代から映画に親しみ、やがて1962年にベルリンに移住し、この地でライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、女優のイングリット・カーフェ…
編集部
 ジャン=リュック・ゴダールによる教育的インスタレーションとして構想された展覧会、「コラージュ・ド・フランス」は、2006年2月に放棄された。今夏ポンピドゥー・センターのgalerie sudで見ることができるのは、その残骸である。新たな展覧会は、「ユートピアへの旅:JLG, 1946-2006 失…
平倉 圭
 ごく大まかにいって、それはひとつの中庭を挟んだふたつの家のようである。  会場の中央を占める「昨日」のその中央は相当量の鉢植えで占められている。壁際で大小のフラット・テレビに少なからぬフィルムが映っている。ラング、レイ、ロッセリーニ、あるいはドーネン、パラジャーノフなど。それから自身の旧作。 …
森元庸介
『トラック野郎』シリーズの菅原文太  7月の15日から17日の連休に、金沢21世紀美術館で「鈴木則文 エンターテイメントの極意」と題された特集が開催された。『シルクハットの大親分』(1970)、『女番長ブルース 牝蜂の復讐』(1971)、『エロ将軍と二十一人の愛妾』(1972)、『不良姐御伝 猪の…
角井 誠

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