HHH+Orsay VS Louvre?

石橋今日美

 10月21日付けの「ル・モンド」紙によれば、フランス文化庁は、オルセー美術館のホウ・シャオシェン新作への共同出資にNGを出した。ジュリエット・ビノシュ出演、アルベール・ラモリス監督『赤い風船』(1956)に着想を得た本作は当初、オルセー開館20周年記念プロジェクトとして、HHHとオリヴィエ・アサイヤス、ラウール・ルイス、ジム・ジャームッシュによるオムニバス作品の一篇となるはずだった。が、それぞれのシネアストたちは長編作品の監督を希望。先手をきって進行していたHHH作品は、印象派の部屋を見て回る子供たちのシーンや、ナビ派の一員として活躍したフェリックス・ヴァロットンの「ボール」(1899)をとらえたショットなど、オルセーでの撮影を終えたところだった。仏文化庁は、オルセーが製作費の25%(約1.05億円)を出資することを禁じる理由を、映画製作は、美術館の第一の社会的目標ではなく、公的資金を投資すべきではない、と説明している。

 オルセー美術館の館長セルジュ・ルモワンヌは不満を隠せない。そもそも美術館側には「映画のプロデューサーになるつもりはない」(「ル・モンド」紙へのコメント)のだし、『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)の撮影協力で集客力をアップした最大のライバル、ルーヴル美術館にまた一歩リードされることになりそうだからだ。同美術館は、これまでにもドキュメンタリー映画の製作を積極的に手がけており、フランソワ・トリュフォー監督『アメリカの夜』(1973)にインスパイアされた、ツァイ・ミンリャンの10作目の長編『Visages』に、最高3千万円ほどの出資を想定している。文化庁は、基本的には名所旧跡での映画撮影を奨励しているが、「それぞれのプロジェクトに見合った経済的バランス」の点から、オルセー美術館の出資額はあまりにもリスクが大きい、と判断されることになった。

 日本では、高知県立美術館が、展覧会との連動企画として、大木裕之監督『HEAVEN-6-BOX/天国の六つの箱』(16ミリ、1995)、林海象監督のドキュメンタリー『ちんなねえ』(16ミリ、1997)を製作した例はあるが、政府がようやく映画製作の経済的重要性を「コンテンツ産業」の枠組みの中で認識し始めたとあっては、上記のようなライバル関係自体、羨望のため息を誘う。

28 Sep 2006
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