ゼメギスの明晰、あるいはデジタル・シネマという怪物
──ゼメキス『ベオウルフ』

今日、最新テクノロジーの威力を謳うハリウッド大作の大部分が、単に観客が見たことがない映像世界を見せるという自己目的化によって、デジタル視覚効果技術に大々的に依拠している一方で、ロバート・ゼメキスという映画作家は、他の監督たちとは一線を画す視覚効果(VFX)の使い手である。実写とアニメーションを見事に合体させた『ロジャー・ラビット』(1988)、メリル・ストリープとゴールディ・ホーンに驚異の映画的「整形手術」を施してみせた『永遠に美しく…』(1992)から『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)、『コンタクト』(1997)、モーション・キャプチャーを駆使した『ポーラー・エクスプレス』(2004)まで、ゼメキス作品において援用されるVFXは、物語の重要なモチーフ、あるいは登場人物の心理描写、説話的機能と有機的にしっかりと結びついたものであり、一瞬の視覚的インパクトを与えて、観客の視線に消費されて終わるものではない。新作『ベオウルフ 呪われし勇者』(2007)もまたそのことを証明してくれるフィルムである。



「英雄の時代は去った。今は人間が怪物だ」とベオウルフが語る場面がある。生身の俳優の演技を数十台のキャメラでコンピューターに取り込み、あらゆる背景と合成して、飛び散る汗さえ喚起させる身体性を持つキャストをスクリーン上に出現させることが可能になった時代。「デジタル・シネマ」は、映画の怪物なのか。しかし、どんなにデジタル映像領域が進化しても、いや、進化すればするほど、アナログ映像技術時代からの商業映画の課題は無視できないだろう。「見せること」と「語ること」との間にいかなる均衡、関係性を築くのか。『ベオウルフ 呪われし勇者』によって、ロバート・ゼメキスはひとつの明晰な解答を提出したのだった。
監督・製作:ロバート・ゼメキス
脚本・製作総指揮:ニール・ゲイマン、ロジャー・エイバリー
撮影:ロバート・プレスリー
編集:ジェレマイア・オードリスコル
音楽・主題歌作曲:アラン・シルベストリ
出演:レイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス、ジョン・マルコビッチ、ロビン・ライト・ペン、アンジェリーナ・ジョリー
2007年/アメリカ/114分
12月1日よりロードショー
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