ジョアン・ペドロ・ロドリゲス レトロスペクティブ

編集部

 来たる3月23日、アテネ・フランセ文化センターと川崎市民ミュージアムを皮切りに、ポルトガルの新鋭監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティヴが開催される。ジョアン・ペドロ・ロドリゲスは現在ヨーロッパを中心に高く評価されているが、その作品は未だ日本で上映されたことはない。しかし、今回、映画上映団体DotDash主催による上映企画の第1弾として、ジョアン・ペドロ・ロドリゲスレトトスペクティブが関東と関西で開催される。さらに、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督・協力関係にあるジョアン・ルイ・フェーラ・ダ・マタ監督の来日も予定されており、このレトロスペクティヴは貴重な機会となるだろう。

ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
João Pedro Rodrigues
映画監督
1966年ポルトガル、リスボン生まれ。
リスボン映画演劇学校で、「ノヴォ・シネマ」の映画監督アントニオ・レイス(『トラス・オス・モンテス』)などのもとで学んだ後、アルベルト・セイシャス・サントスやテレーザ・ヴィラヴェルデらのアシスタントとして映画界に入る。2000年に撮られた処女長編『ファンタズマ』は、ヴェネツィア国際映画祭にコンペティション部門でプレミア上映され大きな話題を呼んだ。2005年の2作目『オデット』は、カンヌ国際映画祭に出品され特別賞を受賞したほか、世界の数多くの映画祭に出品。続く2009年の長編3作目『男として死ぬ』は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映されたほか、トロント国際映画祭、ニューヨーク映画祭、サンフランシスコ国際映画祭など数多くの映画祭に出品され、この年のフランス「カイエ・デュ・シネマ」誌の年間ベストテンに選出された。2010年にはハーバード・フィルム・アーカイヴで、アメリカでの初めてのレトロスペクティヴが開催され、現代ポルトガル映画を牽引してきたアントニオ・レイス、マノエル・ド・オリヴェイラ、ペドロ・コスタといった監督たちの仕事を受け継ぐ新鋭監督として紹介された。2012年のリオ・デ・ジャネイロ国際映画祭では、マノエル・ド・オリヴェイラと並んでジョアン・ペドロ・ロドリゲス特集上映が行われ、世界で今最も注目されている監督の1人である。JPRと長年に渡って映画を共に製作し、現在はリスボン映画演劇学校で教鞭もとっているジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタとの共同監督作『追憶のマカオ』は、第65回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門に正式出品された。現在、最新作『The King's Body』と『Mahjong』を製作中(ともに短編)。また、2012年カンヌ映画祭批評家週間短編部門で審査委員長をつとめる。

ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
João Rui Guerra da Mata
映画監督
モザンビーク、ロレンソ・マルケス生まれ。2004年~2011年、リスボン映画学校でアート・ディレクションの教鞭を執る。1997年、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督の短編作品『ハッピー・バースデー!』に出演し、本作は第54回ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。アートディレクターとして数々の長編・短編映画制作に携わる。特にロドリゲス監督の作品では共同脚本も務める。ロドリゲス監督とのコラボレーションはその後さらに発展し、短編作品『チャイナ・チャイナ』(2007年)や『紅い夜明け』(2011年)では共同監督も務めた。『火は上がり、火は鎮まる』(2012年)は単独での初監督作品である

ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、フィルモグラフィー
1988年 『羊飼い』O Pastor(The Shepherd)
16mm/カラー/12分
脚本・編集:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
撮影:オルランド・アレグリア、デルフィン・ラモス
キャスト:カジミロ・オレイロ、ジョアキン・ラット
リスボン映画演劇学校の卒業制作として撮られた、ある羊飼いの一日をとらえた処女短篇作。近年、ハーバード・フィルム・アーカイヴのディレクターであるヘイデン・ゲストによって企画された、ポルトガルの映画監督アントニオ・レイスのレトロスペクティヴ(2012年5月開催)で、映画学校の教授であったレイスからの影響が色濃い新世代ポルトガル映画監督の作品として注目され、ペドロ・コスタの『血』などと共に上映された。

1997年 『ハッピー・バースデー!』Parabéns!(Happy Birthday !)
35mm/ カラー/14 分
脚本・撮影:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
編集:ヴィトール・アルヴェス、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
キャスト:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ、エドゥアルド・ソブラル
30歳の誕生日にガールフレンドからの電話で起こされた建築家シコと、彼と一緒に寝ていたセクシーな青年ジョアンのふたりの男をとらえた短篇作。『チャイナ・チャイナ』や2012年ロカルノ国際映画祭に出品された『追憶のマカオ』などで共同監督を務めているジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタがシコ役を演じており、今作がふたりのパートナーシップの始まりとなった。第54回ヴェネツィア国際映画祭に出品され、審査員特別賞を受賞。

1997年  『これが私の家』Esta É a Minha Casa(This is My Home)
Betacam/カラー/50分
脚本・撮影:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
編集:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ヴィトール・アルヴェス
故郷のトラス・オス・モンテス地方へと向かう、パリに住む移民の家族を追ったドキュメンタリー作品。靴の修理屋で働く夫と、アパルトマンの管理人をしている妻のパリの日常風景や、フランスからスペイン、さらにポルトガルへと、休暇を利用して車で旅をする家族の姿をとらえている。

1998年 『万博への旅』Viagem à Expo(Journy To The Expo)
Betacam/カラー/54分
脚本・撮影:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
編集:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、パウロ・レベロ
『これが私の家』の続編で、同家族が万博の開催されているリスボンを旅行する様子をとらえたドキュメンタリー作品。前作『これが私の家』の撮影当時、リスボン万博「EXPO 98」がフランスのメディアで広く紹介されていた。家族はリスボンへ行きたいとロドリゲスに伝えていた。果たして翌年の夏休みに家族はリスボンを旅行する。旧市街や郊外、万博会場やサッカースタジアムを訪れる家族の記録。

2000年 『ファンタズマ』O Fantasma(The Phantom)
35mm/カラー/90分
脚本:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョゼ・ネーヴェス, パウロ・レベロ, アレシャンドレ・メロ
撮影:ルイ・ポサス
編集:パウロ・レベロ、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
キャスト:リカルド・メネゼス、ベアトリス・トルカト、アンドレ・バルボーザ
リスボンのゴミ清掃員として働く青年・セルジオの日常が、抑えがたい欲望によって、次第に暴力と堕落へと染まっていく様相をとらえた初の長編作品。第57回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映され、ポルトガル映画で初めて明確かつ過激にホモセクシュアルを描いた革新的な作品として知られる。ベルフォール国際映画祭で最優秀外国語映画賞、ニューヨーク・レズビアン&ゲイ映画祭で最優秀賞を受賞したほか、世界各地の数多くの映画祭で上映された。

2005年 『オデット』Odete(Two Drifters)
35mm/カラー/98分
脚本:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、パウロ・レベロ、フランシスコ・フラザン、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ルイ・ポサス
編集:パウロ・レベロ
キャスト:アナ・クリスティーナ・ド・オリヴェイラ、ヌーノ・ジル、ジョアン・カレイラ
『ファンタズマ』で国際的知名度を得たロドリゲスが、前作における過激な身体表現とは異なる方向性で撮りあげた長編第2作。交通事故によってボーイフレンドのペドロを失ったルイと、子供が欲しいあまり妄想に取りつかれるオデットの交錯を描いた異色のラブ・ストーリー。カンヌ国際映画祭のインディペンデント映画部門に出品され、特別賞を受賞したほか、ボゴタ映画祭やミラノ国際映画祭でも受賞。世界の数多くの映画祭に出品され、ベルフォール国際映画祭では、オデット役を演じたアナ・クリスティーナ・ド・オリヴェイラが最優秀女優賞を受賞した。

2007年 『チャイナ・チャイナ』China China
35mm/カラー/19分
共同監督:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
脚本:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ルイ・ポサス
編集:ルイ・モウラン
キャスト:ジアリャン・チェン、ルイス・ラファエル・チェン、チェン・ジエ
愛のない結婚生活を強いられながらリスボンの街を生きる若い中国人の母親の姿を描いた短篇で、グローバリゼーションや現代の核家族の姿を痛烈な眼差しでとらえたロドリゲスの新しい試みが垣間見られる作品。カンヌ国際映画祭のインディペンデント映画部門に出品されたほか、ベルフォール国際映画祭など数多くの映画祭で上映された。

2009年 『男として死ぬ』Morrer Como Um Homem(To Die Like a Man)
35mm/カラー/133分
脚本:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ルイ・カタラン、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ルイ・ポサス
編集:ルイ・モウラン、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
キャスト:フェルナンド・サントス、シャンドラ・マラティッチ、シンディ・スクラッシュ
過去20年間女性として生きたものの、性転換の外科手術は受けなかったリスボンの中年ドラァグ・クイーン、トーニャ。彼女の健気で繊細な姿が、すでに性転換手術を終えている友人や、ヤク中のボーイフレンド、そして同性愛を嫌悪する軍隊を脱走した疎遠な息子といった人物たちとの交錯を通じて鮮やかに描かれた長編作品。ペドロ・アルモドバル『オール・アバウト・マイ・マザー』やライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『13回新月のある年に』なども想起させる傑作。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映され、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、チェコ映画祭では最優秀作品賞を受賞したほか、ニューヨーク映画祭、トロント国際映画祭など数多くの映画祭で上映された。

2011年 『聖アントニオの朝』Manhã de Santo António(Morning of Saint Anthony's Day)
HD/カラー/25分
脚本:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
撮影:ルイ・ポサス
編集:マリアナ・ガイヴァン
リスボンの守護聖人を讃える6月13日の「聖アントニオ祭」には、恋人に愛の証として、造花のカーネーションと愛の詩を添えた、香草の植木鉢を贈る伝統がある。その祭りの翌朝、始発電車で帰宅するロドリゲスが、携帯電話で写真を撮ったことがこの作品をつくるきっかけとなった。祭りの熱狂と、そのあとに訪れる静寂や帰宅する若者たちの姿がインスピレーションを与えたという。「(祭りのあと)疲れきって家に帰ろうとしている若者たちは、全員が同じような機械的な動きをしていて、酒に酔った彼らのそのリズムはまるでダンスのように見えた。その光景は、幾何学的かつメランコリックなバスター・キートンやジャック・タチらの動き、またピナ・バウシュの踊りを必然的に想起させた。」
本作品はカンヌ国際映画祭でクロージング・ナイト作品として上映されたほか、第50回ニューヨーク映画祭でも上映された。

2011年 『紅い夜明け』Alvorada Vermelha(Red Dawn)
HD/カラー/27分
共同監督・共同脚本:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
編集:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ、ルイ・モラン
マカオの有名な食品市場「レッド・マーケット」で売られる食材が準備されていく様子をとらえたドキュメンタリー。商人の慣れた手つきによって屠殺される生き物の姿などを追いながら、生と死、現実と超現実が次第にオーバーラップしていく。シノプシスには、「2011年2月。マカオの食品市場レッド・マーケット。平凡なふたりの映画監督。生と死に挟まれた、身振りとありふれた日常。ジェーン・ラッセル(1921-2011)の死を悼んで」とある。彼女はロバート・ミッチャムなどと共に『マカオ』(1952年、監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ、ニコラス・レイ)に主演している。本作はロカルノ国際映画祭、リスボン国際インディペンデント映画祭、チョンジュ国際映画祭など数多くの映画祭で上映された。

2012年 『追憶のマカオ』A Última Vez Que Vi Macau(The Last Time I Saw Macao)
HD/カラー/82分
共同監督・共同脚本:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ、ラファエル・ルフェーヴル
キャスト:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、シンディ・スクラッシュ
マカオで幼少時代を過ごしたジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタが、パートナーであるロドリゲスと共に撮ったドキュメンタリーでありフィクション。「幼少期以来訪れていなかったマカオに、私は30年ぶりに帰ることになった。長いあいだ連絡のなかった友人のキャンディからメールを受け取ったからだ。アジアのエキゾティズムに魅せられてか、生活が楽だったからなのか定かではないが、彼女がアジアに行ったことは知っていた。彼女はろくでもない男にまた引っかかっていることを私に伝え、「奇妙で恐ろしいこと」が起こっているマカオに来てほしいと頼んできた。自分の人生で最も幸福だった時間へと連れていってくれるジェットフォイルに乗って、私はマカオへ向かった。」(ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ)。本作は第65回ロカルノ国際映画祭・インターナショナル・コンペティション部門に正式出品された。

2012年 The King's Body(製作中)

2013年 Mahjong(製作中)
HD/カラー/ 33分
共同監督・共同脚本:ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ジョゼ・マグロ
編集:マリアナ・ガイヴァン
キャスト:アンヌ・ファン、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、ジョアン・ルイ・ゲーラ・マタ

関東上映スケジュール
日付 アテネ・フランセ文化センター
3/23(土)
14:50 『ファンタズマ』
17:30 『男として死ぬ』+監督ティーチイン
3/25(月)
17:20 『オデット』
19:30 短編集1
3/26(火)
17:30 短編集1
19:00 『追憶のマカオ』
3/27(水)
17:40 『追憶のマカオ』
19:30 短編集2
3/28(木)
17:30 短編集2
19:00 『オデット』
3/29(金)
15:20 『男として死ぬ』
18:00 短編集1
19:30 短編集2
3/30(土)
13:10 『オデット』
15:20 『男として死ぬ』
18:00 『追憶のマカオ』

川崎市市民ミュージアム
3/23(土)
12:30 『オデット』
15:00 『追憶のマカオ』
3/24(日)
12:30 『オデット』
14:15 監督ティーチイン
15:30 ドキュメンタリー
3/30(土)
12:30 ドキュメンタリー
15:00 『追憶のマカオ』
3/31(日)
12:30 短編集2
15:00 『追憶のマカオ』

関西上映スケジュールは公式サイトにて近日発表

[会場]
アテネ・フランセ文化センター
千代田区神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F
TEL 03-3291-4339(13:00-20:00)
JR/地下鉄 御茶ノ水・水道橋 徒歩7分

川崎市市市民ミュージアム
神奈川県川崎市中原区等々力1-2
TEL 044-754-4500
詳細な地図はこちらをご参照下さい

皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

03 Mar 2013

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